世界ジェネレーター、世界シミュレーター、ランダム生成の魅力

今夜も疲れ気味なので、散漫な文章になってしまうだろう。(言い訳ばかりで申し訳ない。)

現在のところ、Dwarf Fortressには二つ(Reclaim Fortressモードを入れれば三つ)のゲームモードがあり、どのモードで遊ぶかをメインメニューから選択してゲームを始める形式になっている(ゲーム開始画面 )。しかし開発者が明言しているところによれば、このゲームモードは今後増えてはるかに多数になる見通しであり、そうなったら、ゲームモードを選ぶやり方もメインメニューの一覧から指定する方式ではなく、もっとより構造化されたやり方に変わるだろうとのことである。これは私の想像だが、いずれは例えばストラテジーゲームのモードでプレイしている最中に、一体のクリーチャーを選択してその場でRPGモードに移行する、といったこともできるようになるのかも知れない。

いずれにせよ、それほど多くのゲームモードが搭載されるとしたら、そしてそれぞれのモードが(ストラテジーゲームとRPGという風に)ジャンルにおいてすら異なっているとしたら、その時にはDwarf Fortressという一つのゲームとしての統一性はどこにあることになるのだろうか? この問いに対する答えは、間違いなく以下のようなものになるだろう:
巨大で豊穣な「世界」を無限に創り出すことと、様々な遊び方でその世界一つ一つから無限の楽しみをくみ出し、その楽しみの痕跡を世界に残すことこそが、Dwaf Fortressというゲームの根幹であり本質である、と。

Dwarf Fortressが最終的に意図されたすべての仕様を搭載した形で完成したならば、それは世界ジェネレーターであり、世界シミュレーターであるはずなのだ。そして「世界シミュレーター」部分の遊び方はおよそどのようなジャンルのゲームでもあり得る。それはRoguelike RPGかもしれないし、アクションRPGかもしれないし、RTSかもしれないし、ターン制の戦略ストラテジーゲームかもしれないし、動物園経営シミュレーションゲームかもしれない。いずれにせよそれらのゲームは、前提となる世界の自然環境とそこに存在する文明とに影響を受け、世界の資源を利用し、何らかの変化を世界に蓄積させることになる。そしてこれらすべての前提となるのは、「世界ジェネレーター」によってランダムに生成される豊かな世界であり、この世界こそが、かのRogueにおいてゲームごとにランダム生成された「運命の大迷宮」の遠い子孫なのである。ゲーム内におけるすべてがその中にあり、その外には何も存在しない、という意味において。

この生成される世界の豊かさ、という点について言えば、私が特に心惹かれるのは、文明、伝説と歴史、名前を持った街、名前を持った洞窟、名前を持ったNPC、名前と来歴とを持ったユニークモンスター、クエスト、歴史的建造物などの要素が大量に生成されることだ。しかもそのランダム性のあり方が、既存のリストから任意の一つを選択する、といったものではなく、明らかに固有の規則に基づいて動的に生成されている点が特に素晴らしい(プレイしていて興ざめにならず、わくわくできる)。この上さらに、名前と来歴とを持ったアイテムまでもが動的に生成され、しかもその来歴が、その他の伝説や歴史や土地やNPCやモンスターにうまくリンクされていれば、より素晴らしいことだろう。これらのランダム生成の詳細な仕様や実装については、主題的に考察する価値が十分にあると思うので、後日この話題を取り上げてみたい。

むろん人によっては、河川、湖沼、山岳、動植物相、気候などの生成や、ゲーム中にシミュレートされる天候の動的な変化に魅力を感じるかもしれない。現状でも、そういった自然環境的な要素はDwarf Fortressのゲームプレイに大きな影響を与えるし、いずれはそういった点に特にフォーカスしたゲームモード(世界シミュレーター)が追加されることもあるのかもしれない。

いずれにせよ、「世界ジェネレーター」と「世界シミュレーター」というような中学生の妄想のようなアイディアを、真面目に仕様や実装を論ずるに足る主題へと変えたことは、Dwarf Fortressの作者Tarn AdamsおよびZach Adamsの偉大な貢献である。ウィザード級の実装家が五年間を費やすならば、これだけのものを実際に作れるのだ。

最後に一つ補足:
Dwarf Fortressで新たな世界を生成するためには、非力なマシンだと数十分もかかってしまう。もっとも、その間には今何をやっているのかが世界の風景付きで次々と説明されるので、それをぼーっと見ているのもなかなか楽しいとは思うが、しかしそんなに待っていられないという人のために、公式サイトで生成済みの世界が公開されているので、それをダウンロードすればすぐに遊ぶことができる。自分のマシンで世界を生成できる人も、ここで公開されているpngファイルの世界地図をダウンロードして眺めてみると、意外に楽しめるものだ。