Roguelikeの定義とは?

もうすぐ日曜日が終わる\(^o^)/

というわけでこれまでの記事では、

  • 蓄積が重要になる*band固有のゲーム性
  • *bandの「使い捨てダンジョン」問題
  • ランダム生成コンテンツはうまくいけば作り付けのコンテンツよりも面白いはずだということ
  • 最近の*bandバリアントの固定要素の功罪

などについてつらつら書いてきたわけだが、このあたりで、これまで主題的に触れてこなかったRoguelikeの特徴について、落穂拾い的にコメントしてみたい。

Wikipedia日本語版の「ローグライクゲーム」の項には、ローグライクゲームの主な特徴は以下の7点だと書いてある。

  1. 文字による情報表示
  2. 文字によるコマンド入力
  3. ランダム生成ダンジョン
  4. ターン制の戦闘システム
  5. 恒久的な死
  6. スコアランキング
  7. 食糧問題

なるほど。

このうち、「食糧問題」と「ランダム生成ダンジョン」とについてはすでに触れた(つもり)。慢性的な食糧不足による前進の強制と、ダンジョンがランダム生成される回数やタイミングは、本質的なゲーム性を左右するポイントなので、私の考えではこの二点がRoguelikeの最も重要な特徴だということになる。そして、この点に関する考え方如何によっては、Moriaや*bandの系列は丸ごとRoguelikeではなくなってしまうということにもなるわけだ。

文字による情報表示

次に、「文字による情報表示」っていうのも良く言われる点だ。じゃあZangbandをタイル版にした瞬間にRoguelikeじゃなくなるのかとか、NetHack Vulture's EyeはRoguelikeじゃないのかとか、くだらないことも言いたくなるわけだが、ここはぐっとこらえて、なるべく深い意味を汲み取るように努力しよう。
そうすれば、ここで問題にされているのが「情報の表示量・密度」と「見下ろし視点」に関する仕様だということに気づくだろう。(本当か?)
Roguelikeゲームではプレイヤーは常に@の四方八方に気を配っていなければならないから、なるべく広い範囲を高密度で、神のような視点から俯瞰できる必要があるわけだ。これは特に、戦闘系のゲームである*bandに強く当てはまる。この広い範囲を高密度で一覧できなければならない、というニーズを満たすためには、ASCIIテキストやごく小さなタイルが便利と言えば言えるだろう。
ただこれも別に絶対の制約というわけではなく、Zangband Tkみたいに「メイン」画面と「レーダー」画面を分けるとか、トルネコの大冒険みたいにメイン画面の上に全体マップを半透明に重ねるとかすれば、大型のキャラクタグラフィックを導入することもできなくはないだろう。どの程度プレイしやすいかは分からないけれど。

ではさらに考えを進めて、Wizardryみたいな一人称視点のRoguelikeは作れないものだろうか? これは難しい。しかし絶対に不可能でもない気がする。例えばEverQuest(一人称視点のMMORPG)のレンジャーのスキルに、たしかTrackingというのがあった。これを使うと、周辺にいるモンスターやNPC一体ずつの種類と方向とだいたいの強さが一覧表みたいに整理されて表示されるのだが、Roguelikeでも感知したモンスターがこのリストに載り、さらに正確な距離までわかるならば、何とかプレイできるかもしれない。もっとも大前提として、「斜め移動」や「斜めの視界や斜線」がうまく実現できればだめだから、Wizardry方式では苦しいか。

などと書きながら思ったのだが、今ある俯瞰視点のRoguelikeでも、カーソルを一体ずつに合わせなければそのモンスターの詳細情報が見られないという仕様は面倒くさい気がする。そのせいで、見習いプリーストか何かだと思って殴ったらケンシロウ君だったり、盗賊だろうと思ったらケインだったりして慌てるわけですよ。このEQのTracking方式の一覧表というのは、意外と使えるアイディアかもしれない。

最後に付け足しておくと、「文字による情報表示」には、抹殺の指定がやりやすいとか、Zangband以後で「名状しがたい」クトゥルフ系の奴らを表現するのにかえって好都合だとか、そういうごくプラクティカルなメリットもありますね。

ターン制の戦闘システム

リアルタイム制にしてしまうと、どうしてもシミュレーションの緻密さや戦略の複雑さが損なわれることになるのではないだろうか。むろん計算機の性能の限界によってではなく、人間の情報処理能力や反応速度の限界のせいで。
たとえば、四方八方からたくさんの敵が様々なアクションを投げかけてくるとして、それをどうリアルタイムで人間に提示することができて、人間はそれに対してどうリアルタイムで反応すれば良いのか? 現在のRoguelikeの複雑性レベルを下げずに、妥当な解決を見出すのは難しい気がする。

実際、戦闘空間と探索空間とが断絶しておらず、また当面の敵とそうでないものとも断絶していないのいうのは、Roguelike(特に*band)の面白さをもたらす重要な特徴だ。これは、まさにdungeon simulatorとしての本質部分である。例えば、アイスボールを敵に当てたら、「物理演算」によるシミュレーションの結果として、隣の床に落ちている生命の薬も割れてしまうし、余波でダメージを受けたガンダルフも怒って襲ってくる。光で照らした部屋の壁に穴が開いていたせいで隣の部屋にも光が漏れて、寝ていてもらいたかったモンスターが起きて襲ってくるかもしれない。
こういう緻密なシミュレーションの犠牲の上にリアルタイム性が導入され、戦略性よりもむしろ反射神経や指先の器用さが重要になるならば、それはRoguelike固有の面白さからは遠い、別種のゲームに近いということになるだろう。

そういう意味において、「ターン制の戦闘システム」はたしかにRoguelikeの重要な特徴の一つだと思う。

恒久的な死

一度死んだ@をプレイヤーが任意に復活させることができるとしたら、それは確かに興ざめであり、Roguelikeとは違うゲームになってしまうだろう。ローグライカーに必要な「工夫」も「蓄積」も不要となり、場当たり的な特攻とセーブロードを繰り返していれば、いつかはクリアできてしまうのだろうから、そんなゲームは面白くも何ともない。

しかし、復活が任意でもなく、超法規的でもなかったとしたらどうか。例えば、「反魂の術」を使えるペットなり仲間なりを連れていて、@が死んだときに死体か骨が残り、そしてペットなり仲間なりが「反魂の術」を試み、そしてその魔法が成功した場合には、@は耐久力を1失うがみごと復活できる、みたいなのはまずいだろうか?
こういう復活が可能なゲームを是非やりたいかと問われれば、別にそうでもないが、しかしこれが可能だからといって、RoguelikeRoguelikeでなくなってしまうほど本質を損なうという気も、別にしない。何か問題はあるかな?

その他

残りの「文字によるコマンド入力」と「スコアランキング」というポイントについては、特に言うべきことも思いつかないので割愛します。手抜きで失礼。